【医師が解説】不眠症・睡眠障害について【心療内科・精神科】
不眠症は、一般的に睡眠の質または量が不十分で、日常生活に影響を及ぼす状態を指します。
これは、入眠困難、維持困難(夜中に目覚める)、早朝覚醒(早朝に目覚めて二度と寝られない)など、さまざまな形態をとる可能性があります。
不眠症・睡眠障害の原因はストレス、加齢、生活スタイルなど多岐にわたります。
背景にうつ病や躁うつ病といったメンタル面の問題や、身体的・器質的な疾患が隠れている場合があり注意が必要です。
目次
不眠症について
不眠症の症状やタイプは様々です。
布団に入ってもなかなか寝付けない"入眠困難”を訴える方もいれば、一旦寝付いた後に目が覚めてしまう”中途覚醒”でお困りの方もいます。
早朝の時間帯に起きてしまい、再入眠できない”早朝覚醒”も辛い症状の一つです。
これらの症状が持続すると、日中の活動性や生産性が低下してしまいます。
また夜間眠れないからと日中に寝てしまうと、さらに夜寝付けなくなるといった悪循環に陥ります。
そのため不眠症・睡眠障害は早めに治療するべきと考えられます。
まずは生活習慣、生活リズムの改善が望ましいですし、原因となるストレスがあるのであればそれを取り除けるよう一緒に考えてまいります。
しかしあまりに不眠が続いている場合には睡眠導入剤を処方するケースもあります。
不眠のタイプによって、睡眠薬を使い分け処方します。
初めて内服する方であれば、当然安全性の高いものや効果の比較的軽いものから処方します。
また近年では、従来のベンゾジアゼピン系と言われる睡眠薬とは異なったタイプのお薬も近年出てきており、患者さんの症状に適した処方を行っております。
入眠困難でお困りの方には超短時間型、中途覚醒や早朝覚醒で悩まれている方には短時間型〜中間作用型などを処方することが多いですが、年齢・体格・ライフスタイルなどそれぞれの患者さんにあった処方を心がけます。
また効果の感じ方に個人差が大きいですので、患者さんとしっかり相談しながら処方を行います。
できるだけ就寝前の同じ時間に内服して頂き、次回の診察で経過を教えていただきます。
その都度調整し、快適な睡眠が取れるようサポートしていきます。
原因
不眠症の原因は多岐にわたりますが、以下に一部を挙げます
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ストレス: 仕事や家庭、学校などの問題が原因でストレスを感じている人は、不眠症になりやすいです。
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環境要因: 騒音や明るい光、不快な温度など、睡眠環境が不適切な場合、睡眠が妨げられます。
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生活スタイル: 夜更かしや昼寝、不規則な睡眠スケジュールなど、一部の生活スタイルは不眠症を引き起こす可能性があります。
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身体的健康問題: 疼痛、呼吸困難、頻尿などの健康問題は、睡眠を妨げる可能性があります。
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精神的健康問題: 抑うつ症、不安障害、統合失調症などの精神的健康問題は、不眠症を引き起こす可能性があります。
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特定の薬物や物質: 一部の医薬品(例えば、一部の抗うつ薬、心臓病の薬、ステロイド)、カフェイン、アルコール、ニコチンなどが不眠を引き起こす可能性があります。
A. 睡眠の量または質への明らかな不満が以下の症状に1つ以上伴っている:
- 入眠困難
- 頻回の覚醒、または中途覚醒後に眠れないことによる睡眠状態維持の困難
- 早朝覚醒があり、覚醒後再入眠できない
B. その障害は臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、教育的、学業上、行動上、または他の重要領域において機能の障害を引き起こしている。
C. 1週間のうち少なくとも3夜で起こる。
D. 少なくとも3カ月以上続く。
E. 睡眠がきちんと取れる条件下にも関わらず起こる。
不眠症の治療
不眠症の治療には、非薬物療法と薬物療法の2つがあります。
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非薬物療法: 生活習慣の見直し(例えば、カフェインやアルコールの摂取を減らす、規則正しい睡眠スケジュールを作るなど)、心理療法(特に認知行動療法が有効とされています)、リラクゼーションテクニック(深呼吸、ヨガ、瞑想など)などが含まれます。
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薬物療法: 睡眠薬は短期的な解決策として有効であり、長期的な使用は依存症のリスクがあります。それらは通常、他の治療法が効果的でない場合、または症状が非常に重度である場合にのみ使用されます。
症状や状況に応じて最も適切な治療法を医師が選択します。
これらの非薬物療法と薬物療法は併用することが最も効果的であることがわかっています。
現代の睡眠薬は副作用が軽減され、安全性も高まっており、眠れるようになってきたら、徐々に薬を減らしたり、薬をやめるようにするなど、医師と相談しながら治療法を選択していくという考え方が主流になっています。
睡眠の基礎知識-覚醒と入眠のしくみ
なぜ人間は「眠たい」と感じるのか、なぜ起きることができるのかをみていきましょう
人間には、睡眠や覚醒をコントロールする「体内時計(概日リズム)」が備わっています。
人間は、昼夜の変化(地球の自転による24時間の周期)に合わせて、体内環境を意識せずとも変化させる能力が備わっています。
それが「概日リズム」です。
この概日リズムは、ホルモンの分泌、自律神経の調整に大きく関わっており、24時間オートで活躍してくれています。
この昨日が備わっているからこそ、みなさんは寝ていても起きることができ、夜には「眠たい」と感じることができるのです。
体内時計に合わせた生活リズムを心がけることで、昼夜モードの切り替えがスムーズに行われると言われています。
しかし概日リズムの周期が実は1日24時間より若干長いといわれており、1日24時間の生活に合わせるにはどこかでズレを正さなければなりません。
ズレを修正するためには日光浴びることです。
例えば夜ふかしをした場合、概日リズムが崩れ起きる時間がどんどん後ろ倒しとなり、起床時間もみだれてしまいますよね?
そういった乱れをリセットするのも太陽の光です。
太陽の光を浴びることで目から光の情報が伝わり、体内時計がリセットされますので朝起きたらカーテンを明けて太陽を浴びることが大切です。
睡眠の基礎知識-入眠のしくみ
それでは次に、人間はどうしたら眠りにつくことが出来るのかを見ていきましょう
快眠のためのキーワード「体温」「自律神経」
日中、活動をする昼間などは体温が高く保たれていますが、眠りにつくときは「体の内部の温度(深部体温)」を下げることで脳と身体を休息させるという仕組みがあります。
そのため、お布団に入ったときに、次第に眠りにつくには身体の体温を下げることが重要になります。
ではどうしたら体温を下げることができるのでしょうか。
キーワードは自律神経のうち副交感神経を高めることです。
(例1)床につく1〜2時間前にぬるめの湯船に浸かり身体を温めてリラックス
※熱いお湯は交感神経優位となるため、緊張モードになってしまうことは要注意です。
(例2)夕方に汗ばむ程度の運動を行う
睡眠の基礎知識-睡眠についてのあれこれ
それでは最後に、睡眠の質について学びを深めていきましょう。
睡眠時間は、年齢や性別・季節によって変化する
→健康を保つために必要な睡眠時間は年代によって変化するといわれています。
→みなさんはどれぐらい睡眠をとっていますか??
皆さんの睡眠時間を生活記録表をみて確認してみましょう。
睡眠は日の長さにも影響を受けている
睡眠時間は、秋から冬にかけて徐々に長くなり春から夏にかけて短くなる傾向なります。
このように睡眠には季節の変化や日の長さも関連しています。
体内時計が時間や日の出入りの時間を感じ取り、睡眠の長さやタイミングの調整をしてくれています。
睡眠と関連する病気
睡眠不足が続くと、免疫力が下がり病気になりやすくなります。
このように、睡眠と病気には深い関連性があったりします。
[不眠症の人の生活習慣病発症リスク]
高血圧:約2倍
糖尿病:寝付きの悪い人…約3倍、夜中に目が覚める人…約2倍
うつ病:約2倍
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医療法人社団結糸会 リワークセンターキズナ