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アサーション・トレーニング

 

1. はじめに

私たちは日々、職場や家庭、友人との間でさまざまなコミュニケーションを行っています。
しかし、「言いたいことがうまく伝えられない」「相手の意見に流されてしまう」「逆に、強く主張しすぎて関係が悪くなってしまう」などの悩みを抱えることも少なくありません。

こうしたコミュニケーションの問題を解決するために役立つのが、アサーション(アサーティブ・コミュニケーション)です。
アサーションとは、自分の意見や感情を率直に伝えながらも、相手の立場や意見を尊重するコミュニケーションの方法です。
これは、単に「自己主張する」という意味ではなく、相手との調和を保ちながら、自分の気持ちや考えを適切に伝える技術です。

アサーション・トレーニングを学ぶことで、より良い人間関係を築き、ストレスを減らしながら円滑なコミュニケーションを実現することができます。
本記事では、アサーションの基本的な考え方から具体的なトレーニング方法までを詳しく解説します。ぜひ、日常生活や仕事の場面で活かしてみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

2. アサーションとは?

アサーションの定義

アサーション(アサーティブ・コミュニケーション)とは、自分の考えや感情を率直に伝えつつ、相手の意見や立場も尊重するコミュニケーションの方法です。
これは「攻撃的」でも「受け身」でもない、中立的かつ建設的な表現の仕方を指します。
適切なアサーションができることで、誤解や衝突を避けつつ、互いの信頼を深めることが可能になります。

3つのコミュニケーションスタイル

アサーションを理解するために、まずは代表的な3つのコミュニケーションスタイルを知ることが重要です。

  1. 攻撃的(アグレッシブ)

    • 自分の意見や感情を強く押し通し、相手の立場を考えない。

    • 相手に圧力をかけ、支配的な態度をとる。

    • 結果として対立が生じやすく、人間関係に悪影響を与える。

    • 例えば、職場で「この方法しかない!」と一方的に決めつける場合。

  2. 非主張的(パッシブ)

    • 自分の意見を抑え、相手の意見を優先してしまう。

    • 意見を言えずにストレスをためこむことが多い。

    • 自己犠牲的な行動が多くなり、関係が一方的になることがある。

    • 例えば、会議で自分の意見があるにもかかわらず、周囲の雰囲気を気にして発言を控える場合。

  3. アサーティブ(適切な自己主張)

    • 自分の意見を率直に伝えつつ、相手の意見も尊重する。

    • 双方が納得できるコミュニケーションを目指す。

    • 対等な関係を築き、信頼を深めることができる。

    • 例えば、「私はこの方法が良いと思うけれど、あなたの意見も聞かせてほしい」と伝える場合。

アサーションの特徴

アサーションには以下のような特徴があります。

  • 自己表現の明確さ: 自分の気持ちや考えを素直に伝える。

  • 相手の尊重: 相手の気持ちや立場を考慮しながら話す。

  • 誠実で率直な伝え方: 遠回しではなく、適切な言葉で伝える。

  • 対等な関係の構築: 一方的ではなく、互いに納得できる方法を探る。

  • 非言語コミュニケーションの活用: 声のトーン、表情、ジェスチャーも意識する。

アサーションを実践することで、対人関係のストレスを軽減し、コミュニケーションの質を向上させることができます。
これにより、家庭、職場、友人関係などさまざまな場面で、より円滑で誤解の少ないやりとりが可能になります。

 

 

 

 

 

3. アサーション・トレーニングの効果

アサーション・トレーニングを行うことで、さまざまなメリットを得ることができます。
以下に、代表的な効果を紹介します。

1. 人間関係の改善

アサーションを実践することで、相手に対して適切に意見を伝えつつ、相手の考えも尊重できるようになります。
その結果、互いに信頼し合い、誤解や対立を減らすことができるため、人間関係が良好になります。
職場や家庭、友人関係において、より円滑なコミュニケーションを実現できるでしょう。

2. ストレスの軽減

自分の意見を適切に伝えられないと、ストレスが溜まりやすくなります。
しかし、アサーション・トレーニングによって適切な表現方法を身につけることで、溜め込むことなく自然に感情を伝えられるようになります。
その結果、心理的な負担が軽減され、精神的な安定を保ちやすくなります。

3. 自己肯定感の向上

アサーションを実践することで、「自分の意見を伝えても大丈夫だ」という安心感を得ることができます。
これにより、自己肯定感が高まり、自信を持ってコミュニケーションを取ることができるようになります。
自分の価値を認めることで、積極的な行動を取ることができるようになります。

4. 職場や日常生活での活用例

アサーションは、職場の会議や交渉、家庭での会話、友人とのやり取りなど、あらゆる場面で活用できます。

  • 職場での活用例

    • 会議で自分の意見を明確に伝える。

    • 上司や同僚に対して適切にフィードバックをする。

    • クライアントとの交渉で冷静かつ的確に伝える。

  • 家庭での活用例

    • 家族との意見の違いを冷静に話し合う。

    • 夫婦や親子関係で、お互いの気持ちを尊重しながら話す。

    • 子どもに対して、感情的にならず適切に伝える。

  • 友人関係での活用例

    • 自分の気持ちを率直に伝え、誤解を防ぐ。

    • 相手の意見にも耳を傾けながら話す。

    • 不満をため込まず、冷静に伝えることで関係を深める。

アサーション・トレーニングを通じて、より良い人間関係を築き、ストレスなく過ごせるようになります。

 

 

 

 

 

4. アサーション・トレーニングの実践方法

アサーション・トレーニングを実践するためには、いくつかの具体的な方法があります。
ここでは、日常生活で取り入れやすいトレーニング方法を紹介します。

1. Iメッセージを使う

Iメッセージとは、「私は〜と感じる」という形で自分の気持ちを伝える表現方法です。
相手を責めるのではなく、自分の感情に焦点を当てることで、対立を避けつつ自己表現ができます。

例:

  • 「あなたが遅刻したから、私はイライラしている。」(×)

  • 「私は、時間を守ってもらえると助かると感じています。」(〇)

2. DESC法の活用

DESC法は、次の4つのステップで構成されるアサーションの実践技法です。

  • D(Describe):状況を客観的に説明する

  • E(Express):自分の気持ちを伝える

  • S(Specify):具体的な改善策を提案する

  • C(Consequence):行動の結果を伝える

例: 「最近の会議で発言の機会が少ないと感じています(D)。私は、自分の意見を伝える場があるともっと貢献できると思います(E)。
次回の会議では、意見を述べる時間を少し増やしてもらえませんか?(S)。そうすれば、より良いアイデアを共有できると思います(C)。」

3. 非言語コミュニケーションの意識

アサーションでは、言葉だけでなく、表情や声のトーン、ジェスチャーも重要です。

  • 目を合わせる:相手の話をしっかり聞いていることを示す。

  • 落ち着いた声のトーン:冷静さを保ち、相手に安心感を与える。

  • オープンな姿勢:腕を組まず、リラックスした状態で話す。

4. ロールプレイや実践的なトレーニング

実際の場面を想定して、アサーティブなコミュニケーションを練習することも有効です。
友人や同僚とロールプレイを行うことで、適切な言い方や振る舞いを身につけることができます。

練習例:

  • 仕事の依頼を断るときの言い方を練習する。

  • クレーム対応の場面を想定し、冷静に対応する方法を試す。

  • 家庭での意見の違いを、対立せずに伝える方法を模索する。

アサーション・トレーニングを続けることで、自然に適切な自己表現ができるようになります。

 

 

 

 

 

5. アサーション・トレーニングの注意点

アサーションを実践する際には、いくつかの注意点を意識することが重要です。
適切なバランスを保つことで、より効果的なコミュニケーションが可能になります。

1. アサーティブすぎて「自己主張が強い」と誤解される場合

アサーションは、自己主張と他者尊重のバランスが重要です。
しかし、過度に自己主張を意識しすぎると、相手から「押しが強い」「自分勝手」と受け取られることがあります。
そのため、言葉の選び方やトーンに気を配りながら、相手の反応も確認しつつコミュニケーションをとることが大切です。

2. 文化や相手の価値観に配慮する重要性

アサーションの考え方は、国や文化によって受け入れられ方が異なることがあります。
例えば、日本のような「調和」を重視する文化圏では、率直な意見表明が避けられることもあります。
相手の文化や価値観を尊重しながら、適切な表現を選ぶことが重要です。

3. 非言語コミュニケーションを意識する

アサーションは言葉だけでなく、表情や態度、声のトーンなどの非言語的要素も大きな影響を与えます。
例えば、目を合わせずに話すと、自信がないように見えたり、逆に攻撃的に映ることがあります。
適切なジェスチャーや表情を意識しながら伝えることで、より効果的なコミュニケーションが可能になります。

4. 状況に応じた柔軟な対応が必要

アサーティブなコミュニケーションは大切ですが、すべての状況に同じ方法が適用できるわけではありません。
例えば、緊急時や相手が極端に感情的になっている場合には、冷静に対応しつつも、アサーションの度合いを調整する必要があります。
状況に応じた柔軟な対応を心がけることが大切です。

5. 継続的な実践の必要性

アサーションは一朝一夕で身につくものではなく、継続的な実践が必要です。
最初は違和感があったり、うまく伝えられなかったりするかもしれませんが、徐々にスキルを磨いていくことで自然に実践できるようになります。
日常生活の中で少しずつ取り入れ、成功体験を積み重ねることが重要です。

アサーション・トレーニングを行う際は、これらの注意点を意識しながら、無理なく実践することをおすすめします。

 

 

 

 

 

6. まとめ

本記事では、アサーション・トレーニングの基本概念から、その効果、具体的な実践方法、注意点までを詳しく解説してきました。

アサーションを身につけることで、自分の考えや気持ちを適切に表現しつつ、相手の意見も尊重するバランスの取れたコミュニケーションが可能になります。
これにより、人間関係の改善、ストレスの軽減、自己肯定感の向上といった多くのメリットが得られます。

まずは、日常の会話の中で「Iメッセージ」を意識してみる、DESC法を使って要点を整理する、非言語コミュニケーションに気を配るなど、取り入れやすい部分から実践してみましょう。
継続的なトレーニングを行うことで、より自然にアサーティブなコミュニケーションができるようになります。

 

最後に、アサーションは単なる技術ではなく、相手との信頼関係を築くための重要なスキルです。
無理なく自分のペースで取り組みながら、日々のコミュニケーションをより円滑にしていきましょう。

 

 

 

 

 


 

医療法人社団結糸会 リワークセンターキズナ

 

 

 

 

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